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株式市場展望 (2024年1月版)

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

 

昨年の日経平均株価は、33年ぶりに高値を更新する活況な年となった。年初26,000 円付近から、足元33,000 円台へと大幅に上昇した。輸出企業には、為替の円安傾向が追い風となり、国内企業はコロナ5 類への移行により、飲食・サービス業を中心に経済活動が活発化、物価上昇を上回って景気が堅調に推移した。また、上場企業へのPBR(株価純資産倍率)向上要請も株価を押し上げる一因となった。

 

今年は、株式相場の格言で「辰(たつ)巳天井」、「戌亥の借金、辰巳で返せ」とされ、上昇相場の年とされる。戦後過去6回の辰年の騰落率は、年末高を勝ちとした場合、4勝2敗、平均騰落率+28.0%と十二支の中で最も高い。辰とは周知のとおり龍のことで、十二支中で唯一の空想上の生物だが、東洋では権力と隆盛の象徴とされており、中日ドラゴンズのニックネームにも使用されている。

 

留意点だが、まずは、市場を左右する米国の景気と金融政策である。昨年の米景気は、堅調に推移しながら後半にかけて減速を示す指標が増え、直近の物価上昇率(CPI)も前年比3.0%台前半まで鈍化した。米連邦準備理事会(FRB)は、利上げを3会合連続で見送り、景気減速の度合いと利下げ時期を見極める段階に入り、米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年内3回の利下げを想定する。市場では、先取りする形で長期金利が低下、NYダウは1年1カ月ぶりの最高値を更新し、為替も日米金利差の縮小により円高ドル安方向に急展開した。日本株にとって、円高と米景気減速は逆風だが、激しい変動を除き、利下げによる回復期待で米国株が上昇すれば、けん引される場合も考えられる。しかし、景気指標が低下せず、FRB が政策金利を据え置かざるを得ない場合、金利再上昇を懸念した株価下落には注意が必要であろう。

 

国内で注目されるのは、日銀の金融政策正常化である。CPIは目標水準を上回る状況が続いており、日銀は達成への自信を強めつつある。YCC(イールドカーブコントロール)廃止や、マイナス金利政策解除を視野に入れ、植田日銀総裁の言う「賃金と物価の好循環」が軌道に乗るかが、ポイントとなる。連合の賃上げ要請や、政府の賃上げによる税制優遇によって、経営者側も容認する姿勢を見せており、機運は高まりつつある。春闘が日銀にとっての判断材料となり、政策修正に動く可能性は高い。また、賃上げ実施を表明する企業が増加し、確実視されれば、結果を待たずして政策修正に踏み切る可能性もあるだろう。

 

また今年は、内外で多くの選挙が行われる。海外では、台湾総統選挙を皮切りに、インドネシア、ロシア、韓国、インド、メキシコ、欧州議会と続き、11 月5日には最も注目される米大統領選挙が行われる。国内では、京都、熊本、東京と続き、9月に自民党総裁選挙が予定されている。米国では、現職バイデン大統領(民主党)とトランプ前大統領(共和党)が対決する公算が高まっているが、正式な候補者が決まる8月まで、政策の予見可能性は低く、市場は不安定化しやすいだろう。仮にトランプ氏復権の場合、税・財政や対外政策、移民やエネルギー政策など、幅広い領域で大幅な転換を目指す可能性が高く、FRB にも圧力を強めると思われるほか、同日の議会選挙の結果も、政策の実現に影響するだろう。

 

制度面では、個人投資家の新NISA が開始され、投資枠が大幅に引き上げられる。拡充が与える影響は、家計側の投資余力にもよるため、即効性は期待できないものの、徐々に株高に寄与するものと考えられる。

 

今年の展望だが、日本の金利は、日銀のYCC 撤廃とマイナス金利政策解除に伴って上昇はするものの、緩和的姿勢は継続され、1.0%前後の金利でコントロールされるとみられる。為替については、米国の利下げ期待と日本の金利上昇懸念から、円高ドル安基調と考えられるが、水準は、1 ドル140円±15円前後を想定したい。最後に日本株だが、前半は、内外の政治の予見可能性の低下により不安定化に注意を払いつつ、後半は、業績相場的な株価の上昇を期待する。現時点で、日経平均採用銘柄の今期予想一株利益は、約2,250円(Quickより)と推定されており、PER15倍では、33,750円が適正水準となり、5%増益であれば35,438円となる。

 

以上から、今年の日経平均株価は34,000円±2,500円辺りの推移を考えたい。中日ドラゴンズととともに、昇竜の年となることを願う。

(戸谷 慈伸)

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