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株式市場展望 (2023年1月版)

新年あけましておめでとうございます。

 

昨年の日経平均株価は、年初29,000円台でスタートした後は一進一退が続き、1年を通して上値の重い展開が続いた。原因として挙げられるのが、連動性の高い米国株の下落である。インフレ抑制をめざす FRB の利上げ継続により、株価の割高感が意識され押し下げる結果となった。また、リスク許容度の低下で外国人が日本株を売り越し、ETF を購入してきた日銀が、 3 月以降殆ど買わなかったことも株価低迷の一因と考えられる。コロナ禍からの経済活動の再開や円安という追い風もあったが、米国株の下落圧力が上回った。為替は年初から一方的な円安ドル高が進み、9 月には政府・日銀による24 年ぶりの為替介入が実施された。FRB 高官の発言や物価指標の鈍化で、利上げペースの低下観測により反転したものの、円安水準は続いている。昨年の日本の株式・為替市場は、「米国のインフレと利上げに翻弄された一年」といえるだろう。

 

今年は、株式相場の格言で「卯は跳ねる」とされ、実り始めや景気が上向く年として、株式にとって縁起の良い年とされている。過去、年末高を勝ちとすると、1951年以降4勝2敗と勝ち越しを記録しているが、注目材料を点検し、今年の相場を展望してみたい。

 

注目されるのは、昨年の市場を揺るがした米国のインフレと金融政策の今後である。米国の消費者物価指数 (CPI)は夏以降低下傾向だが、FRB の物価目標を上回る水準が続いている。もしCPIが目標水準へと低下し、パウエル議長が指摘する労働需給のひっ迫感解消が鮮明となれば、利上げ停止を視野に入れつつ、金利の低下と円高ドル安の流れが期待される。日本株にとっては、円高は逆風だが、米金利低下による米国株上昇が後ろ盾となりそうだ。逆にCPIが高止まりするようであれば、FRB は利上げの姿勢を維持せざるを得ない。この場合、再度の金利上昇による円安ドル高、日本株の下落要因となりうる。年初あたりまでは市場も織り込み済みとみられるが、今後のスタンスがドル円や日本株にとって重要なポイントになろう。

 

次に、米国景気である。米国の債券市場は、短期金利が上昇する一方、長期金利は短期ほど上昇せず、7月5日以後は2 年物と 10 年物国債の間で逆イールド(長短金利差がマイナスの状態)が続いている。逆イールドの発生は、経験則上その後の経済の景気後退シグナルとされており、資金を短期調達して長期運用する金融機関の運用を難しくさせ、貸出が抑制されて景気にはマイナスに作用する。アメリカ経済が景気後退となれば影響は免れず、日本株にとっても逆風となるだろう。

 

日本の注目も、中央銀行の金融政策である。既に日本のCPIも、目標水準である 2.0%を上回り 3.0%台後半に達しており、緩和の継続が円安と物価上昇の一因とみる向きもある。黒田総裁の任期終了を前に、日銀はイールドカーブ・コントロールの長期金利許容変動幅の引き上げを決め、今後、緩和縮小にむけた動き次第では円高ドル安に動くだろう。

 

昨春から上昇した原油価格は、世界経済の減速懸念とともに落ち着いたものの、近年の高い水準にとどまる。エネルギーを海外に頼る日本は、原油価格上昇は輸入額の増加となり貿易収支を悪化させる。LNG(液化天然ガス)も、同様に原油価格と連動する。米国でも、ガソリン価格の上昇が物価上昇圧力を高めるため、今後の動きには注意したい。地政学リスクとしては、継続するウクライナ侵攻の行方や、中国の動きには関心を払いたい。

 

IMF(国際通貨基金)の最新予測では、23 年の実質 GDP は低成長ながら世界全体 2.7%増、米国 1.0%増と発表されている。予測通りであれば、日本企業も同様に増益基調を維持し、日経平均は3万円を目指せるだろう。しかし、米国のインフレとFRB の姿勢が長期化すれば、経済を過度に冷え込ませることとなりかねず、25,000円割れ水準も視野に入れておくべきである。FRBにとっては、景気とインフレに配慮しながら、二兎を追う試練の年となるだろう。

 

今回で「証券展望」は900号の節目を迎えることとなりました。弊社130年の節目ともに、皆様の信頼に応えられますよう精進してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。

(戸谷 慈伸)

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