株式市場展望 (2022年1月版)
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年の日経平均株価は、最高値を更新する米国株に対し、30,000円越えは記録したものの、年末は若干の上昇で終える往来相場であった。
今年は、株式相場の格言では「寅(とら)千里を走り」とされ、勇猛な印象を持つ。ただ、戦後過去6回の日経平均株価の年間騰落率でみると、年末高を勝ちとした場合は1勝5敗で、勝率では十二支中最下位となり、平均騰落率+1.8%になる。1986年(+42.6%)の大幅高や、1950年や1974年の様に安値後の、上昇相場の起点となる年となりそうだ。
内外の主なイベントには、2/4~20冬季オリンピック(中国・北京)、3/4~13冬季パラリンピック(同)。4/4~東証新市場区分開始。7/中頃、参議院議員選挙。11/7~18国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27、エジプト)。11/8米国連邦議会中間選挙(上院34、下院全議席)。11/21~12/18 FIFAワールドカップ(カタール)などが予定されている。国内の法案では、年初の電子帳簿保存法改正、4/1~改正育児・介護休業法、成年年齢引き下げ(20歳から18歳)、プラスチック資源循環促進法などが施行される。
OECD(経済協力開発機構)の見通しでは、昨年の世界成長率5.6%に対して、今年は4.5%への鈍化を予測している。回復は続くものの、接種率の低い国々や対人接触型産業が、回復基調から取り残され、不均衡が拡大することに懸念を示している。また、経済活動再開に伴う需要に対する供給側の混乱や、インフレ圧力の上昇、労働力不足などをリスク要因として挙げるとともに、エネルギー価格高騰や変異株の拡大が、不確実性が高める要因として言及している。
地域別には、日本は、ワクチン接種の進展と活動制限の緩和を背景に、消費の回復が続くことが期待される。半導体不足による自動車生産の制約も解消に向かい、7~9月期にはコロナ前のGDP水準への回復を見込む。米国は、リバウンド局面が一巡し成長率は低下する見通しである。法案通過が注目されるバイデン政策や、雇用・所得環境の改善を支えに、成長は持続されると予想される。同様にユーロ圏でも、経済活動の正常化によりコロナ前水準を回復するものと思われる。アジア圏では、中国の不動産価格の下落による経済の下振れリスクは残るものの、ハイテク関連を中心にした製造業投資が下支えとなりそうである。またインドは、今後10年が人口ボーナスのピークに向かうため、比較的高い成長率が予想されている。
リスク面では、原油をはじめとしたコモディティ価格の上昇や、船舶の運搬コストの上昇によるインフレ圧力などがある。今後は雇用や賃金も物価上昇要因になると思われ、エネルギー価格が再度上昇すれば、物価高が持続する可能性が残る。次に、金融政策の転換にも注意したい。米国は、3月にもテーパリングを終了し、利上げ段階へと入る。今回、各国中央銀行が大幅な金融緩和を実施し、株価上昇に寄与したことは言うまでもない。世界の全株式市場の時価総額のGDP比は過去最高水準に達している。GDPの成長以上に株価上昇が速い点には、注意を払うべきであろう。またIMF(国際通貨基金)によれば、政府債務のGDP比水準は新興国・先進国ともに1880年以降で最も上昇している。政府部門同様に、非金融企業部門の債務の増加が著しい点も指摘されており、注意しておきたい。
今年の注目分野は、引き続きカーボンニュートラルとデジタル化とみたい。国際機関は、カーボンニュートラル推進のために再生可能エネルギーに毎年4兆ドルの投資が必要と提言しており、今後はエネルギー分野にとどまらず、多様な分野を巻き込む形で拡大する見通しである。デジタル化は、アフターコロナの成長産業として関心が再度上向くことが期待される。半導体、通信、AI、量子コンピュータなど、世界的にも一層のデジタル化の推進が期待される。
今後、虎の子の資産運用の重要性は一段と増している。投資家は、各々のリスク許容度を確認し、虎視眈々と虎穴に入るチャンスを狙うことが肝要であろう。
(戸谷 慈伸)