株式市場展望 (2021年1月版)
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年の日経平均株価は、年初、新型コロナ拡大に伴う経済失速懸念により急落、一時は17,000 円を割り込んだ。年央、政府と中央銀行による大規模な財政出動と金融緩和策により投資家心理が改善、株価は急速に回復した。年末にかけワクチン開発報道や、米大統領選の懸念も和らぎ、株価は年初来高値を更新、27,500円台と約30年ぶりの高値を回復することとなった。新型コロナと政策対応により揺れ動いた一年であった。
今年は、株式相場の格言では「丑つまずき」とされ、丑年は年末高を勝ちとするならば、1961年以降では3勝2敗である。注目材料を点検しながら、今年を予想してゆきたい。
まず世界的に注目されるのは、新型コロナ感染収束の可否である。ファイザーやモデルナなどの開発をはじめ、ワクチンの実用化は目前に迫る。英米を皮切りに接種が開始され、感染収束と経済活動の正常化が期待される。しかし、アレルギーや、持続性・副作用、超低温環境での供給体制には不透明感も残る。
次に、米国バイデン新政権の政策運営が注目されよう。20 日の大統領就任とともに新政権が発足する。政権に率先して求められるのは、コロナ禍の景気対策である。今後、早期の追加経済対策合意が必要になるだけに、政権の調整力や公約に掲げた各種政策の実現への取り組みがポイントとなる。とりわけ2 兆ドルの環境・インフラ投資や、増税・規制強化の行方のほか、米中対立の行方を見守りたい。またジョージア州上院の決選投票で民主党が獲得できなければ、上院の過半数を共和党が占め、ねじれの発生が政策実現の障害となりかねないだろう。FRB に関しては、緩和姿勢が後退する可能性は低い。当面2%を上回る物価上昇を許容する方針を示しており、利上げ再開は22年末以降と予想され、株価をサポートすることとなろう。
欧州では、9 月に独メルケル首相退任が控える。メルケル首相は、EU 内で中心的な指導者としての役割を果たしてきただけに、独ならびにEU の政治の安定が保たれるかどうか、後任にも注目が集まる。また、北朝鮮や中東の地政学リスクでは、金委員長と米大統領との関係がリセットされることになり、新政権の出方次第で市場が緊迫化する恐れもある。中東は、イランと米国の核合意への復帰が模索されれば、対立は緩和するとみられるが、敵対するイスラエルやサウジアラビアなどが警戒姿勢を強め、イランとの間に緊張感が高まる可能性には留意が必要である。
国内は、菅政権の運営が注目される。政権が発足してから矢継ぎ早に政策を繰り出したが、今後の実現に向けた取り組み、進捗が重要である。進展は株価のサポート要因であるが、遅々とすれば失望を招きかねない。政権支持率も低下が続けば、反比例して市場の警戒感が高まる可能性もある。また、任期到来の衆議院解散、総選挙も注目される。解散時期とともに、与党の過半数割れや大幅な議席減の事態には注意が必要である。日銀は、引き続き同様の姿勢を保つとみられ、緩和余地は少ないが物価目標達成も遠く、政策の維持と考えるのが妥当であろう。
想定としては、ワクチンの普及や治験の蓄積により、感染が次第に収束に向かい、内外経済活動の正常化を見込み、日経平均株価は、年初27,500円から30,000~25,000円のレンジと見ておきたい。ただし、現在は先駆けた株価上昇によって、株価の予想PER は25倍前後と大幅に上昇しており、今後の景気回復を相当先まで織り込んだ形となっている。現況、日経平均採用銘柄の構成比上位の指数への影響度が極めて大きいうえ、グロース色が強いため、短期的には一方向に振れ、ボラティリティも大きくなりやすい点には注意を払いたい。
昨年のコラムで、米国株のアノマリーでは、就任4年目の株価が上昇した場合、新大統領の翌年は下落、下落した場合は来年上昇の可能性が高いと記したが、丑年だけに新大統領就任1年目がつまずいても、投資はつまずかないよう心掛けたい。
(戸谷 慈伸)