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株式市場の現状と今後の動向 (2016年2月版)

 日本の株式市場は昨年12月1日に戻り高値を付けたのち、今年1月21日にかけて急落し、その後は日本銀行のマイナス金利導入などで反発に転じている。急落の要因を結論からいえば『高過ぎた事の反動』であろう。米国の名目GDP(国内総生産)に対する株式市場時価総額(NY証券取引所・ナスダック市場合計、年末ベース)の比率は96~15年の平均で「126%」になっている。同比率は昨年5月末で151%になり、89年末の日本市場の147%を上回る水準であった。

 

 今回の株価急落の影響で、米国市場の同比率は今年1月20日終値時点の推計値で「126%」まで低下している。米国の株式市場は実体経済に対して膨らみすぎていたためスピード調整の圧力が発生し、世界の株式市場のリード役である米国株が下落する事で今回の世界同時株安につながったと思われる。

 

 下落のきっかけになったのは1.米国の利上げ、2.原油価格の急落、3.中国経済の減速等であろう。本稿では原油価格等に焦点をあてて株式市場の現状と今後の動向について述べたい。米先物原油のWTI(期近物終値、1バレル)は14年6月に107ドル26セントの高値を付けているが、今年1月20日では「26ドル55セント」まで急落している。原油は政治価格といわれており、石油輸出国機構(OPEC)が減産調整をする事で高価格を維持していた。

 

 しかし、「米国のシェールオイルの台頭」もあり、OPECの世界の原油生産に占めるシェアは40%ほどと存在感が低下している状況だ。さらに「サウジアラビアとイランの宗派対立の深刻化」という問題も発生している事から、OPECの減産が容易に進まないため、高価格に戻す事は極めて難しい状況になっている。このような要因から、原油価格の低迷は長期化する見通しだ。

 

 中東産油国の原油生産コストは10~20ドル(1バレル)の予想になっているが、OPEC加盟国の過半の財政均衡原油価格は80ドル以上(同)の推計になり、現在の価格では各国とも大幅な財政赤字になる状況だ。このため、3兆ドルを超すオイルマネーは株式等の売却を余儀なくされており、これが世界の株式市場の下押し圧力になっていると思われる。

 

 ただ、米国のエネルギー省の推計による同国の主要石油会社の石油・天然ガスの採掘や開発等に要する平均コスト(06~08年対象)は約36ドルになっている。WTIはリーマンショック時の08年12月に同水準をわずかに切り下げる33ドル87セント(終値)で大底をつけて反発しているが、今年1月安値時の原油価格はその水準さえも下回っている。『高過ぎた事の反動』は大幅に進展し、現状は下げ過ぎの状況であり、ここからの下落は限定的であろう。

 

 原油下落は短期的には株式市場にマイナスだが、日本のような原油の消費国では原材料価格が低下し、売上総利益の拡大につながるため、中長期的にはプラスの効果が非常に大きいと思われる。最近の油田開発は高コストのものが多く、原油の20ドル台は長期化しないと予想したい。今後、1~2年は原油価格の30ドル~50ドル台の低位安定が継続し、日本企業へのプラス面が注目されるようになると推察している。

 

 中国経済に関しては、株式市場にも大きな影響をもたらす事から簡略に触れたい。中国の名目GDP(世界銀行調べ、14年)は10兆3601億ドルになっている。中国の習近平国家主席は昨年、今後5年間は年6.5%以上の実質経済成長率を保つと明言している。15年以降の平均で毎年6.5%の成長率を6年間継続した場合(為替変動は考慮せず、名目・実質は同水準として仮定)、20年の中国のGDPは15兆1169億ドルになり、増加分の4兆7568億ドルのみで、日本のGDP(同)の4兆6015億ドルを上回る規模になる。

 

 中国の1人当たりGDPは日本の5分の1ほどの水準にとどまっており、今後の経済成長の伸びる余地は非常に大きいと思われる。中国の真のリスクは現在の共産党による一党支配の政治体制から、歴史の必然である多党制の議会制民主主義国家に移行する際、それが平和的に実現できるのかという問題だと思われる。大過なく政治を軟着陸させるためにも統治機構の真摯な改革が不可欠であろう。いずれにしても、中国経済の減速は、短期・中期のサイクルでは予想されているほどの悪影響はないと思われる。株価は一時よりは回復しつつあるが、現状の日本の株式市場は悲観し過ぎの水準だと推察している。

 

 

(北川 彰男)

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