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株式市場展望 (2025年1月版)

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 

昨年は、欧米の金融政策が利下げに転じる一方、日本は利上げを開始する転換の時を迎えた。株式市場は、日経平均株価が7月に約34年ぶりの史上最高値を更新した後、8月にはブラックマンデーを上回る過去最大の下落幅を記録する波乱含みの展開となった。政治面では、トランプ氏が米国大統領への返り咲きを決め、上下院とも共和党の過半数獲得に対し、日本は衆議院議員選挙の結果、政権与党が過半数割れとなる想定以上の変化の中で今年を迎える。

 

今年は、十干十二支の乙巳(きのと・み)。60年前は、戦後最長のいざなぎ景気がはじまる年で、前年の東海道新幹線開通、東京オリンピックに続き、名神高速道路開通、5年後の大阪万博決定など、経済大国への幕開けの年であった。乙は、植物に例えれば、屈曲から伸び始める状態で、巳は已(やむ)に通じ、草木の成長が最盛期を迎えた状態を指す。動物では蛇として、古来から神の使いとして信仰され、脱皮を繰り返して成長するさまが、生命力や復活・再生の象徴とされた。今年は紆余曲折の後、実を結び、将来にわたる成果が現れる年と位置付けられるだろう。

 

戦前から8回の巳年の株価の年間騰落率は5勝3敗で、平均騰落率は+6.7%と、ともに十二支中では8位となる(※戦後では+13.4%) 。兜町の相場格言では、「辰巳(たつみ)天井」とあるが、ここでの天井は、高値での推移と解釈しておきたい。

 

今年の相場見通しだが、前号同様、米国次期大統領トランプ氏の政策が及ぼす、世界経済や日本の産業への影響を考慮することが重要となる。現段階ではトランプ氏の政策の矛盾点や、実現の可能性を疑う向きも多く、たとえ共和党が上下院とも多数派で、閣僚も全て自分の息のかかった人物となり、政策を実行しやすくなるとしても、額面通りに実施されるとは考えにくい。

 

多くの識者の指摘通り、トランプ氏の政策にはインフレ再燃や財政悪化を招くリスクがある。減税や規制緩和は、米国景気を刺激してインフレ圧力を高めるとともに、移民の送還は労働供給の制約から、賃金上昇がインフレに悪影響を及ぼしかねない。保護主義的な政策を貫くことが支持につながると考えるトランプ氏は、前回同様の関税引き上げを掲げるが、前回も米国製造業が恩恵を受けたわけではない。相手国の報復関税を考えれば、輸入品の価格上昇の影響を被るのは消費者となり、マイナス効果の可能性も残る。すでに関税引き上げを、メキシコ、カナダ、中国との交渉カードとして表明しているが、これは、単なる通商問題にとどまらず、外交・安全保障分野での問題となる可能性をはらむ。ただ今回も、適用除外などで実効税率は高まらずに、相手国次第で撤回や変更の可能性も含め、全容と先行きが明らかになるのは年後半までかかりそうだ。

 

関税の影響が軽微とするならば、世界の経済成長率は、OECD(経済開発協力機構)見通しの3%強と仮定できる。世界景気が緩やかな回復基調を辿れば、日本も堅調に推移し、企業の業績も底堅いと考えられるだろう。DXを始めとした潜在的な設備投資に対する需要や、先送りされていた投資が進展するとみられる。「物価と賃金の好循環」のカギを握る賃上げ動向には今年も注目したい。税制改正で「年収の壁」も調整されれば、消費へのプラス効果は期待できよう。企業業績は今年も、プライム上場企業の連続最高益更新が予想される。金融セクターは、金利上昇や新NISAなどの良好な環境と、米政権の反トラスト法(独占禁止法)強化撤回によるM&Aの見直しなど、引き続き注目されそうだ。ただし、業種や企業ごとの業績の濃淡には注意しておきたい。

 

リスクは、やはり政治の不確実性である。石破政権が夏の参院選を乗り越えられるのか、隣国韓国、欧州ドイツ、フランスの政局への留意が必要だろう。同時に、中国やドイツ経済の低成長化も懸念される。ただし、グローバルな資産配分では、相対的に日本のポジションが高まる可能性もある。仮に、日本株に前回のようなイレギュラーな急落があれば、投資のチャンスと捉えたい。

 

現在、日本の上場企業の多くは資本効率を考えた経営に舵を切っている。政策持ち合い株の解消や、不採算事業からの撤退を進め、自社株買いや増配などの株主還元で株価を支える動きを見せる。こうした構造改革が進展すれば、株価の上値切り上げも期待できる。

 

今年の日経平均株価は、39,500円を基準に上値+5,000円、下値-2,500円近辺の推移と考えたい。金運を招く巳年に、皆様の幸運をお祈りいたします。

 

(戸谷 慈伸)

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