株式市場展望 (2020年1月版)
新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
2019年の株式市場は、トランプ大統領に翻弄されながらも日米ともに上昇して終えた。ダウ工業株30種平均、日経平均株価ともに約20%の上昇を記録した。
令和となり新天皇即位を終えた今年は、東京で2回目のオリンピックが開催され、新たな幕開けの年となる。また、今年の干支「庚子」は、「更」(あらたまる)に通じ、新しい十二支のサイクルが始まる年でもある。「子は繁栄」のごとく、上昇相場を期待したい。過去5回の子年相場は3勝2敗。ひとつ前の08年はリーマンショックの年で、騰落率マイナス39・7%であったが、トータル平均騰落率22・8%とまずまずの年回りである。
世界の投資環境は、緊張と緩和を繰り返す米中間の対立を中心に、製造業の業況悪化が続いている。しかし循環的には復調に向い、業績拡大を伴いながらの「業績相場」への移行を始めるものと思われる。まず米国だが、景況感調査で注目されるISM製造業指数は、ここ数年の最低水準にある。この指数は株価への影響が大きく、業況の底打ちが確認されれば、株価への追い風になると考えられる。また、国内経済は、消費主導の順調な拡大が続いており、年末商戦も好調であったようだ。昨年3回の予防的利下げを実施したFRBは、当面の据え置きを示唆しつつ、引き下げ余地を残した。家計や企業の債務残高増加の懸念も含め、昨年10月に再開した短期国債600億ドルの買入れは、中ごろまで継続する見通しで、年前半の金利は、現行水準が続くと考えられる。企業業績も、半導体製造装置などのハイテク分野中心に先行して業績が悪化していたが、「5G」関連の実需もあり、一足早い回復の兆しを見せ、底打ムードが出始めている。
中国の景気減速は、金融緩和をはじめ政府主導による景気対策が行われ、今後も6%成長維持のために必要な対策が講じられるものとみられる。ただ、これ以上の香港政府に対する抗議活動の深刻化は要注意とみられ、軍部による鎮圧になれば問題となろう。
昨年12月13日、米中両政府は貿易交渉の「第1段階の合意」に達し、対中制裁関税「第4弾」の見送り、適用済み追加関税の税率引き下げを発表し、18年7月以降続いている貿易戦争も沈静化に向け動き始めている。
そして日本だが、米中貿易摩擦、台風など自然災害、消費税引き上げの影響を受け、昨年は年末にかけて、製造業中心に業況の悪化がみられた。機械受注など海外需要は大きな落ち込みとなり、企業の見通しも慎重な見方から下方修正が優位となった。しかし、その勢いも徐々に弱まるものとみられる。19年度の業績は減益の可能性は残るものの、20年度にかけて改善に向かうとみられ、現在の日経平均株価予想PER(株価収益率)14倍前後を基準に、1株利益に連動した株価推移が予想される。直近の平均株価PBR(株価純資産倍率)も1.1倍台と割高感はない。同様に予想配当利回りも2%台と、金融緩和維持の姿勢に変更が見られない限り、業績相場を念頭に底堅い展開になるのではないか。年末の日経平均株価の見通しは、25,000円としたい。
アノマリー(変則性)だが、米国の株価は、過去、米大統領任期4年間の3年目で、株価が上昇しやすい傾向にある。大統領選実施を前に、国民の支持を得るための政策が打ち出されることが多い証左だが、もし政党が変わった場合にはそのトレンドの変節は起こりうる。4年目の今年の株価が上昇した場合、新大統領の翌年は下落、下落した場合は来年上昇の可能性が高い。あくまで米国の話だが、注意点として押さえておくべきであろう。
末尾に、今年の主なイベント・政治・経済予定(金融政策決定会合等は除く)を参考までに記載させていただく。変更の可能性もあるので、再度の確認はお願いしたい。
最後に、今年1年が皆様において繁栄の年になるよう心より祈念しております。
(戸谷 慈伸)