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アメリカ大統領選挙 (2019年12月版)

世界の秩序と経済を揺さぶる、ドナルド・トランプ米大統領が2017年1月20日就任以来、3年が経過、来年11月3日の大統領選挙まであと11か月と迫った。

 

トランプ政権誕生後、その評価には賛否両論があるものの、米国株は大きく上昇した。この期間にNYダウ工業株30種平均は、20,000ドル割れの水準から始まり、28,000ドル台と実に約40%近くの上昇を記録した。対して日経平均株価は、約23%の上昇と大きく水を空けられている。

 

世界経済の減速傾向とは裏腹に、昨年の米中貿易摩擦の表面化以降、米国株優位の展開が続いている。当の本人も世界の支持は必要とはせず、共和党や有力な支持基盤に応えるための動きを続けており、株価の最高値圏と半世紀ぶりの失業率を、自分の功績とのアピールを繰り返している。

 

16年の大統領選ではトランプ大統領は、アメリカ社会の変化に不安を感じる白人層、製造業を支えてきたブルーカラーの多い中西部地方の白人労働者に支持を訴えた。そして、「忘れられた人たち」と揶揄された彼等も、これまでの社会を支えてきた自分達こそが「真のアメリカ」の代表者と自負し、反移民や反自由貿易をアピールする彼を、共和党の候補へと推し上げた。また、彼の有力な支持基盤の一つが、ペンス副大統領、ポンペイオ国務長官も属する白人キリスト教福音派の信者である。福音派はユダヤ教と共通の聖書を持つ緊密な関係であり、アメリカ経済に大きな政治力を持つユダヤ人とのパイプも深い。票を持つ福音派と資金を持つユダヤ人が、トランプ政権のタニマチであり、調査会社の調べでは共和党層の支持は9割に近く、下がる気配はない。

 

一方の民主党は、20名超の出馬表明から、討論会を経て候補者の絞り込みが始まった。オバマ政権時代の副大統領で重鎮ジョー・バイデンや、国民皆保険や富裕層税など左派的政策のエリザベス・ウォーレン、最低賃金引き上げや大学授業料無料化など民主社会主義的なバーニー・サンダースが現在、支持率上位三人である。

 

米大統領選は、20年2月のアイオワ州の党員集会を皮切りに各州の予備選や、党員集会で指名する選挙人が選ばれてゆく。中でも、予備選が集中する「スーパーチューズデー」で、大勢がかなり絞り込まれることとなる。前回16年は11州での実施であった「スーパーチューズデー」が、今回は16の州で実施される予定であり、大きく注目される。候補者選びにおける選挙人全体の約4割がこの時点で開票されることとなり、万が一にもウォーレン氏が選出された場合、マーケットは波乱含みとなりそうだ。両党の代表候補が正式に決定した夏以降の一般投票で最終決戦が始まるが、共和党は8月の党大会での現大統領の指名が有力である。一方の民主党は、有力な候

 

また、多くの浮動票が存在する州、「スイングステート」の獲得も重要である。前回は、共和党支持が高い州以外のスイングステートを僅差で制し、トランプ政権樹立となったが、全米自動車労働組合のストライキに見るように失望した有権者の鞍替えも懸念される。

 

民主党の支持層も、盤石ではない。各候補者の主張する政策に乖離があり、支持層は一丸とはいえない。浮動票を取り込むためには政策的な偏りが小さい候補者が妥当だが、ウクライナ問題でバイデン氏の支持率が低下、本命が見えてこないのが現状である。過去、景気や雇用情勢の側面から大統領選を見ると、ともに堅調、若しくは改善の局面では現職大統領が再選しやすく、その逆では現職が落選しやすい傾向がある。現在の株高と失業率の低下は、トランプ大統領には追い風といえる。12月15日の関税第4弾の実施は、現時点では不透明であるが、たとえ実施されようとも、これにて一時休戦の色彩が強くなるようにも思われる。たとえ残りの関税引き上げが行われたとしても、アメリカのGDPに占める割合から見れば影響は軽微と考えられ、今後、米中間の問題は、香港、台湾、といった政治的な部分に移行されるのではないか。

 

投票率が低いほど、支持団体を持つ候補者に有利なのが選挙の定石だが、次回大統領選挙には有権者の世代交代も迫っており、現段階では結果を見通すまでには至らない。マーケットが不測の事態とならぬことを望む。

 

(戸谷 慈伸)

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